所得顔雑録

タカヒロを 下から読んだら 浪費過多
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永久未来続く今を
 生まれてこの方四半世紀、葬式というものに一度もちゃんと出たことがない。祖父母もしっかり健在で、親戚に不幸もなかった。
幸か不幸か、この年まで「死」という感覚を知らずに生きてきてしまったのだ。人の死という事象について経験値がないから受け止め方も知らない。

だから、ライブハウスでよく会う友人が死んだと聞いたところで、振る舞い方も、感情の矛先の向け方も、俺は何もわからなかった。



朝10時、西立川駅。かなりの人数が来ると聞いていたのに、集合時間にちゃんと集まったのは俺含め三人だけ。こんな日だって、皆はいつも通り時間にルーズだ。やっぱりこうでなくちゃ。実に根っからのバンドマンらしいじゃないか。

住宅街の中にひっそりと佇むヒロくんの実家は、この日彼に焼香を上げるために集まった20人を収容するにはあまりに小さく、部屋に上がるのにも二回に分かれなければならず長い時間がかかった。お父さんは、その間ずっと俺たちのために息子の状況や思い出を語り続けていてくれた。ちょうどアソロックの日に火葬が行われていたそうだ。

彼の遺影は、思わず微笑んでしまうくらい若々しく、まだ「タカハシヒロト」というライブハウスネームを名乗っていなかった頃の、小さいヒロくんの写真がたくさんあった。かつて出身が同じということで一緒にツアーに連れて行ってもらったという、ゴイステや銀杏BOYZのグッズと一緒に出てきたそうだ。
ライブを見ることに人生の全てを費やしたヒロくんの骨の横に置かれたのは、CDやDVDではなく、「銀杏BOYZ世界ツアー」のフライヤーだった。


お父さんの声やヒロくんの遺影、わずかな遺品を見て複雑な思いが交差したが、悲しいという感情は少なかった。いつも通り、皆でヒロくんのことを笑い合いながら話した。
もともと浮世離れした奴が、本当に浮世から離れてしまっただけ。だから実際、僕らの心境はあまり変わっていない気がする。
たぶんこの先ずっと変わらず生きてるような感じがするだろうし、それが彼がこの世にいたことの証明になる。死の実感なんてあいつには似合わないから、いらない。それでいい。

よくあるドラマのワンシーンのように、立川の空は猛烈に青かった。



三鷹で一人暮らしをしていたヒロくんの家に、遺品を譲り受けにいく。ダンボール何箱にも及ぶ莫大な量のCDと、袋にぎっしり詰められた大量の書籍。もうすぐ全て処分されてしまう彼の軌跡。

古今東西、邦楽と名のつくものなら何でもあった。音楽なんて本当にごく一部にしか興味のない俺ですら、思わず声を上げてしまうようなものもたくさん。
俺はよくわからないが、9mmの自主盤や、ムックやカリガリ?が10年前に出した自主製作盤やカセット、ビデオテープ。これ、天文学的値段がつくんじゃないか?セバス飯田君と、興味本位で調べてみることにした。


セバスの前身バンドや、太平洋が今まで出した数え切れないほどの企画CDはもちろん、知ってるバンドの旧譜は全部あった。
汚ねぇ自主盤があると、それらは大抵太平洋か笹口騒音のCDだった。これだけ並ぶとわかるが、ヤナガワレコードのCDは日本でも屈指の低クオリティだ。笑

ヒロくんに「勝手に持っていかないでくださいよー」とブツブツ文句を言われそうだが、そこは音楽ファンにとって宝の山であり、

僕たちが刻んだ少しばかりの歴史が眠る図書館でもあった。



欲を出せばきりがないし、思い出を振り返ろうとしたら時間が足りない。今じゃ売ってないインディーバンドのCDと、俺が昔大好きでなぜかヒロくんもファンだったDir en greyの作品を何枚か手に取る。こんなの俺以外欲しがらないでしょ?大事にするよ。


ライブに来ても絶対に金を払いたがらないヒロくんの姿勢には何度か疑問を感じることがあったけど、部屋中に広がったCDを眺めてタカハシヒョウリが
「これだけ音楽に貢献していたこいつを、俺たちが毎回ゲストで入れてやっていたのは間違ってなかったのかもな」
と呟いたのを聞いて、やっとその胸のつかえが取れた気がした。
ライブハウスで毎回書くゲストリストも、もはや彼の遺品みたいなものだ。誰かの名前を書く度に、昔ここに毎回書いていた名前があったな、と思い出すことだろう。


片付けが終わった後も、俺たちは自然と輪になりその部屋に居座り続けた。ヒロくんが真ん中にいて、「まだ帰んなくていいじゃん」と言っているかのように。

けど、もう時間だ。

俺たちはこの後、新年一発目のライブがある。皆、バイトもあれば待ち合わせもある。時間は過ぎる。


故人の思い出を胸にしまって生きていく。たまに、何かのきっかけで思い出す。残された人に出来るのは、ただそれだけだ。
だからこそ、今は自分のやるべきことをやろう。


ヒロくんが好きでいてくれた太平洋不知火楽団を、もっともっと良いものにしよう。
それが俺たちに出来る、ヒロくんへの手向けだ。



頑張るよ。ありがとな。





おれとヒロ
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